巫女と王子と精霊の本
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少女が目の前から消えると、妖精のフェルは一人、部屋を見渡した。
『…彼女は、期待に応えられるかな』
その声は、先程までの幼い口調ではなく、大人びたものだった。
『全てを知ったら、君は何を想い、どんな物語を綴るんだろう。あぁ、楽しみだな』
くるっと空中で一回転し、パチンッと指を鳴らす。
すると、そこには何冊もの本が現れる。
『僕の生み出した物語達………。人間達に愛されなければ消えてしまう運命』
本たちはすでに表題を失ったもの、触れる事もできなくなったものと様々だ。
『なら、変化を与えればいい。人間は悲劇や惨劇を好む』
そう、期待しているよ………君が綴る物語に…
この物語が消えるか、存続するかはあの少女しだい。