巫女と王子と精霊の本
しばらく馬に揺られていると、純白の花が咲き乱れた丘が見えてきた。
「何あれ!一面真っ白!」
「あれがハミュルの花だ。本当に綺麗だな」
丘につくとエルシスが私を馬から下ろしてくれる。
私はエルシスが馬を木に繋ぐのを待たずに歩き出していた。
「本当に……綺麗……」
丘は風が少し強い。
髪が、服が風に揺られて気持ちいい。
どんどん歩いていくと、丘の先端に辿り着く。
そこからはカイン国が、カイン国の町並みが見えた。
「…人はさすがに見えないかぁ…」
カイン国…ううん、この世界にある国、人…
「これが私の守りたいもの…」
両手を広げそこから見えるカイン国に手を翳す。
エルシスの守りたいもの…
「おい、一人で勝手に歩くな。危ないだろ」
「あたっ」
エルシスが私の頭を軽く小突く。
「お前は巫女なんだぞ、もっと身の心配をしろ」
「うーん……」
巫女である私の価値なんて、私自身にはわからない。
「そんなに欲しいものなのかな、未来がわかる力なんて」
隣のエルシスに尋ねてみると、エルシスは困ったように首をかしげる。