巫女と王子と精霊の本



「お前は違うのか?鈴奈」


問いに問いで返される。



「私は……」


どうだろう、この力を手にいれて便利だとか、得だと感じたことはあったかな…


ううん、違う。
むしろ私には重い。


私がこの力をもっていても、うまく皆の為に使うことができていないんじゃないかと思う。



この世界に来たのも、私で良かったのかなって…


この世界は大好き。
でも好きだからこそこの世界に私は何かできているのか、不安になる。



「私は…恐いかな」


そう、言葉にするなら恐い。
あの時のエルシスを昨日の事のように思い出す。


もう会えないと思った。
その時の絶望を私は一生忘れないと思う。

結局未来を知っていても守れなかったんだ。



「…怖い?」

「うん、怖い。この力があっても守れないものもあるって事が…」


力は力でしかない。
未来を変える奇跡でも望む未来を作る魔法でもないってこと。



「…そうか、お前が選ばれた理由はそこにあるんだろうな」


「え?」


どういう意味なんだろう?


その真意を問いたくて聞き返した。




「怖いと思えるから、力を私欲には使わない。正しく使えるんだろう」


「…私欲には使わない…か…」


でも、それは違うんじゃないかな。
私のこのアルサティアを救いたいという気持ちは、エルシスが、私が関わった人たちを好きだからだ。


「好きな人を守りたいから、だから力を使うというのは私欲じゃないのかな?」


「まぁ、私欲だとしてもお前のその想いは綺麗な願いだと思うけどな」




綺麗な願い………

エルシスはよく私を綺麗っていう。
でも私は……

























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