巫女と王子と精霊の本
「私は…綺麗なんかじゃないよ」
「鈴奈?」
自分でも驚くくらい弱々しい声が出た。
「私は、みんなと同じように欲があるし、誰かを嫌ったりすると思うよ…」
「……………………」
「私だって、汚いよ…」
私は綺麗なだけじゃない。
時々その綺麗というのが重荷に思う。
私は、私だって皆と変わらない。
エルシスを失ったら、魔王を恨んだはず。
そんな想いは、私には許されないの?
「なんでだ?お前は心が汚れていると言われたいのか?」
エルシスは心底分からないと言いたげに首をかしげた。
「そう…じゃなくて。私は…」
そこから言葉が繋げない。
私は結局何が言いたいんだろう。
「…あはは、よくわからなくなっちゃった」
結局、自分の答えがわからずに笑ってごまかす。
「…そうか」
エルシスもそれ以上は何も聞かなかった。もしかしたら、私の不安に気づいていたのかもしれない。
「ね、ねぇエルシス。私、門番さんに聞いたんだけどさ、ハミュルがこの時期にしか咲けないのは咲き方にあるって、どういう事?」
この空気をなんとかしたくて話を変えてみる。
「あぁ、その事か。咲けないんじゃない、ハミュルはこの時期にしか咲かないんだ」
「ん??」
首をかしげると、エルシスは笑いながら私の頭を撫でた。
「わ!!」
びっくりして一歩下がるとエルシスは悪いといって笑う。
「そのしぐさがつい、な」
つい、ってなんだ!?
どういうこと!?
顔が火照ってくる。
「で、どういうこと!?」
それを誤魔化すように尋ねるとエルシスは笑って頷いた。