巫女と王子と精霊の本
「ハミュルは虫達の興味を惹き自身の種を多く、遠くへと運ばせるようにする為に咲く。その瞬間から最高の輝きを放ちどんな花にも劣らない」
「へぇ~…」
その一時を最高の輝きで咲き誇る。
たとえ永く咲き続ける事は出来なくても…
「儚いけど…この花達は悔いはないんだろうね。したいと思うことをやりきるんだから…」
「そうだな。俺もそう在りたい」
「エルシスノはだめ!エルシスはやりたいことを終えても生き続けなきゃ。エルシスは見届けるんだよ、自分の守った世界の未来を」
私にはそれが出来ないから…
まるでハミュルの花だ。
「ならばお前もだな、鈴奈。お前も見届けろ、アルサティアの未来を」
「それは……」
出来ない、なんて言えない。
実際未来を変えたらどのタイミングで自分の世界に帰るのかもわからない…
「見てみたい…な」
見てみたい、それがしっくりする答えだった。
「…そうか、なら頑張らないとな」
エルシスは何か言いたそうだったけど何も聞かなかった。
ありがとう、エルシス。
いつかあなたに話せたらいいのに…
心からそう思う。