巫女と王子と精霊の本
「まさか、記憶が無いのか?ここはアルサティアのカインだろ?」
アルサティアのカイン!!
やっぱり、ここは物語の世界なんだ…!!
私は本を取り出し、ページをめくる。
―魔王の災厄により、嵐が起こります。海に近いマニル国、カイン国の順番に、波に襲われ、多くの死者を出しました。
「…嵐……」
「なに?」
「嵐が来ます!!!沢山の死者が出る!!」
私が必死に言い募ると、男性は目を点にして私を見つめる。
それから、思いっきり吹き出した。
「くっ…くくっ…その心配は無い。アルサティアはここ何百年もの間嵐なんて来ていないからな」
「でも来るの!!!大きな嵐が!!」
「怖い夢でも見たんだろ」
何度言っても、男性は聞く耳をもたなかった。
「…あなたじゃ話にならない!!ねぇ、マニル国ってどこ!?」
「話にならないってお前なぁ…。なんだ、マニル国に行きたいのか?」
嵐の被害に最初に合うのはマニル国だ。
「そう!!マニル国に行きたいの!!」
「ここから東に進めば直ぐに着くぞ。マニル国はカインの直ぐ隣だからな」
「ありがとう!!」
早くマニル国に行って嵐が来る事を伝えなきゃ!!
私は男性が指指した方へと駆け出した。
「あ、おい!!なんだか変わった女だな…」
男性の呟きも知らないまま。