巫女と王子と精霊の本
「ううん、選ぶとか…そういう前に……」
私はこの世界の人間じゃない。
いつかは元いた世界に帰る。帰らなきゃいけないんだ。
「そんな私が………」
そんな私がこの世界の、ましてや王子様に恋をするなんて許されない。
「今ならまだ戻れる……」
本当に後戻り出来なくなる前に断ち切らなきゃ…
それに、叶うはずない。
「…エルシスには、結ばれるべきお姫様がいるんだから…」
―ズキンッ
「…あはは、自分で言ってて胸が痛いや…」
でもまだ大丈夫…
今ならこの痛みに耐えられる。
傷が浅いうちなら…
「…はぁ、駄目だ!こんなんじゃネガティブ思考真っ只中だよ!!」
―バチンッ
私は自分の頬を叩いて気合いを入れる。
少し気分転換をしよう。
部屋にこもってばっかりじゃ気も滅入るよね。
私は軽く身支度を整えて本を手に部屋を出た。