-Lost Japan-失われし愛国
「にしても、途中までしか分からないルートをどうやって辿るよ?」


「だから、後先考えろって毎回言ってるだろ。取り敢えず新宿の原子発電施設区域を南下している様だから、まだ南下してると仮定して潜入する。」


部屋から出るなり晃の表情は次第に困惑に変わり、やる気はあるが頭が回らないらしく、写真を眺めて首を傾げる。そうなる事を分かっていたかの様に蓮哉は溜め息を吐き出しながら、分かる様に人差し指で写真に記されたルートを辿った。


「さっすが親友蓮ちゃん。パートナーの欠けた部分を補う、見事な友情プレイだな。」

「…たまに晃が羨ましくなるよ。行くぞ晃、時間が勿体ない。」


嫌味さえもポジティブに捉えて、見事なチームプレイと満足げにする晃に羨ましさと呆れが入り交じるも、話を一旦切り話題を変えて、歩く速度を早めながら晃に急げと促した。
地上へと出る為の唯一の道がある本部深部の潜入員のみ立ち入り許可される通路に、二人は足を踏み入れた。
通路の奥にあるエレベーターに乗ると同時に、晃は腰のバックから片手銃を二丁取り出して、漆黒の銃身に指を這わせて弾の装填数を確認し始める。


「蓮、サイレンサー付けとけよ?」


「分かってる。出来るなら、命を奪う様な事はしたくないんだけどな。」


「出来るなら…な。」


表情を微かに曇らせながら、弾を装填する蓮哉に戸惑いがちに相槌を打ち、片手銃を見つめて晃は苦笑いを浮かべた。
エレベーターは地上より一層手前で止まり、そこからは発見を回避する為に用意された梯子を使用して地上に"潜入"する。
地上に潜入以外での外出は死を意味し、見回りの監視官に見付かれば戦闘のスキルがない者なら尚更排除される可能性は高まる為、潜入員以外の地上への潜入は禁止されていた。


東京「新宿第3エリア・原子発電施設区域」


廃棄物の処理場の裏のマンホールを慎重に押し上げて、辺りに監視官が居ない事を確認するとマンホールを退し、地上へと潜入を開始した。
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