-Lost Japan-失われし愛国
晃の言葉に僅かに戸惑いの色を滲ませるも、状況を見れば一番の得策で、後々こちらが楽になるのは分かっていた。蓮哉は晃の言葉を受け入れて、晃が教える方に向けて足早に走り出し、少女を支えながら晃の無事を信じて振り返る事はせずに本部に向かう。


「ま、取り敢えず地上のエリートさんに地下の強さを見せてやらないとな。」


両手に一丁ずつ片手銃を握り締めては、壁に身を隠して監視官の足音が近付いて来るのを待ちながら、晃は銃弾を込めて口元に楽しげな笑みを浮かべる。
まるで命を賭けている様には思えない程、気楽に息を吐き出しては、駆け付けた監視官達の目の前に立ちはだかり二丁の銃を向けた。


「…国民証なし。アレは非国民だ。」


「さっすが、御名答だぜ?」


「屑がノコノコと姿を現すとは…、排除する。」


二人の監視官が軍からの情報を頼りに少女を探していたのか、エリア内を見回すも居るのは晃のみで、日本国民の証として刻まれる首筋の日本国旗の刻印が晃には見当たらずに、冷静な四つの瞳が晃を映した。
監視官が腰に装着している銃に手を伸ばした瞬間、晃は素早く引き金を引くが、監視官は陸軍の上部を中心に構成されており白兵戦に優れ、建物の陰に銃弾を回避し、晃も既に生き絶えた男性が寄り掛かる鉄筋に身を隠す。
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