-Lost Japan-失われし愛国
「……。」


赤く煌めいた液体に塗れ、恐怖から解き放たれたと同時に死を迎えた杉浦は命を絶った。
蓮哉は既に銃口は監視官から外し、その光景…自分の淡い正義感に視界を反らして背を向けていた。


偽善者…。


自身の心に向けて呟いた言葉は、どんな言葉より鋭く深く突き刺さり引き抜こうと手を添えれば、言い訳の三文字が頭を埋め尽くしていく。


「…死んだな。逆らえば死ぬ、それが国の法だ。」


「…!」


その言葉にを聞いた瞬間、重く動かなかった引き金が空気の様に軽くなり、思考すら回らないまま、ためらいなく引き金を引いた。


「…──!」


狙いは正確に監視官の心臓部を撃ち抜き、杉浦の体から水溜まりの様に大地に流れて行く血と撃ち抜かれたと同時に飛び散った血が混ざり合い、不気味な紅色が太陽の光に歪んだ光を反射させた。


(…、今更…。)


─…自らの力は人の命を奪う事しか出来ないのか?

人の命と可能性を秤にかけた上に、目の前でたった一人で国に歯向かった人間を見捨ててしまった事に変わりはない。


やり所のない怒りと己への嫌悪感というワインがワイングラスに注がれ、次第に溢れ流れ落ちていく。
向けられた背中に突き刺さる既に息すらしていない人間の視線に、蓮哉は謝罪の念と共に再び歩き出した。
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