-Lost Japan-失われし愛国
──…外は晴れて…いや、人工の太陽が光を差しても本当の太陽の光を知った体には偽物の光に過ぎないだろう。
例え、同じ効果が得られたとしても、本当の太陽は一つしかないのだから。
そんな偽物の光が遮られた司令官室で、書類を片手に静流は内容に目を通していた。
壁に寄り掛かって、辺りの景色を拒絶する様に目を閉じていた晃の瞼の裏側には先程の監視官の姿が焼き付いて、壊れたビデオの様に何度も何度も意識に反して再生を繰り返す。


国の為に死ぬ事が本望なのだろうか。


自分のたった一度の刻を。


たかだか国の為に?


「狂ってやがる…。」


「ええ、本当。どっちも言えたモンじゃないわね。」


晃が呟いた言葉に静流は同意の言葉を紡ぐが、その言葉の意味の差は右と左の様に全くとして違っていた。


「対政府壊滅用核ミサイル[デストロイ]、名前通りね。こんなの撃ち込まれたら、皆仲良く御陀仏になってしまうわ。流石に地下世界に影響がないとは言い切れないわね。」

「そっちか。けど確か、世界各国に日本が国を制圧する為に送った代表者がいるんだろ?そんな危ねえミサイルなら大きさ的にも無理じゃないのか?」


「ええ。確かに監視官に張り巡らされた中で隠れる事すら必死なのに、そんな余裕はないわね。それに設計図の存在を知ったからには防衛は堅くなるし。」


設計図に描かれている大きさからしても、見付からずに造る事は困難の域を越えていたが、設計図があるからには造る意思はあるという事でもあり、静流は書類の文面を何度も読み返すも分かる事は表面的な事でしかなかった。
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