-Lost Japan-失われし愛国
「それで、蓮君はどうしたの?姿が見えないけれど。」
「多分、医務室に居ると思うぜ。」
「な…!?医務室って、怪我でもしたの?」
「いや、ちょっと…な。後で分かるさ。」
晃から紡がれた言葉に報告外の事故があったのかと静流は問うも、晃は首を軽く横に振り、蓮哉から直に報告が来ると告げて、敢えて自分からは何も語る事はしなかった。
その時、僅かに生じた沈黙の空間を裂く様に扉が開き、先ず部屋に入ったのは軽い音と共に鳴り響く杖の先端、続いて老いた男性の姿が扉を通り室内にと足を踏み入れ、細く掠れた声で言葉を紡ぐ。
「静流君。今、大丈夫かね?」
「岩見(いわみ)先生!わざわざ出向いて戴かなくても、こちらから行きましたのに。」
「構わぬ。それより、設計図を見せてもらえんか?」
「ええ。こちらです。」
晃の置いた鉄製のパイプ椅子に腰掛けた岩見は、静流から設計図を受け取り、首からぶら下げた虫眼鏡を持ち文面に目を通し始めた。
岩見昭彦(いわみ・あきひこ)はこの地下世界の設計をした建築士で、設計能力は秀でているが年齢の関係からか地下世界建築後、殆ど本部内で休養している。
皺が深く刻み込まれた眉間に更に皺が寄り、文面を睨み付ける鋭い眼光には次第に驚愕とした念が満ちていき、口元を歪めて息を深く吐き出した。
「多分、医務室に居ると思うぜ。」
「な…!?医務室って、怪我でもしたの?」
「いや、ちょっと…な。後で分かるさ。」
晃から紡がれた言葉に報告外の事故があったのかと静流は問うも、晃は首を軽く横に振り、蓮哉から直に報告が来ると告げて、敢えて自分からは何も語る事はしなかった。
その時、僅かに生じた沈黙の空間を裂く様に扉が開き、先ず部屋に入ったのは軽い音と共に鳴り響く杖の先端、続いて老いた男性の姿が扉を通り室内にと足を踏み入れ、細く掠れた声で言葉を紡ぐ。
「静流君。今、大丈夫かね?」
「岩見(いわみ)先生!わざわざ出向いて戴かなくても、こちらから行きましたのに。」
「構わぬ。それより、設計図を見せてもらえんか?」
「ええ。こちらです。」
晃の置いた鉄製のパイプ椅子に腰掛けた岩見は、静流から設計図を受け取り、首からぶら下げた虫眼鏡を持ち文面に目を通し始めた。
岩見昭彦(いわみ・あきひこ)はこの地下世界の設計をした建築士で、設計能力は秀でているが年齢の関係からか地下世界建築後、殆ど本部内で休養している。
皺が深く刻み込まれた眉間に更に皺が寄り、文面を睨み付ける鋭い眼光には次第に驚愕とした念が満ちていき、口元を歪めて息を深く吐き出した。