-Lost Japan-失われし愛国
「…随分と危ないモンを造りおって。まあ、腐り切った日本の除菌には持って来いじゃな。」


「おいおい、俺らにまで被害が来ちまうぜ?」


「晃君、問題点はそこではないわよ。先生、真面目に御願いします。」


静流は二人の会話に不機嫌さを露に眉を潜め、呆れ半分の息をガムを吐き捨てる様に浅く吐き出し、口を屁の字に曲げて睨み付けた。

そう、そんな簡単に割り切れる問題ではない。
例え、本部の壁を強くした所で守れるのは"レジスタンス"の面々のみになってしまう。地上で国の為と破れば死の待つ規則と、労働基準法など無視した過酷な労働に縛り付けられた国民も見捨てる事にもなる。
その考えの結果だけ述べれば、やはりレジスタンスの力だけで政府から国を解放し、兵器の使用を阻止させる以外に思い付く事はなかった。


「分かっておる。そう目くじらを立てるではない静流君。安心せい。見た所、資源的にも金銭的にも現段階で一気に造る事は不可能じゃ。」


「そんなに大変なのか?岩見の爺さん。」


「うむ。外郭から核内に至るまで素晴らしい設計じゃが…、今日本に規制を受けている国外の政府にはバレずに造るのは至難の技に近い。」


「なら、まだ重要視しなくて良いという事ね。けれど安心は出来ない…か。」


「難しい話だな。ったく、良く分からねえ。」


机に丁寧に置かれた設計図を見つめ、どんどんと会話をまとめ勝手に納得していく静流と岩見に視界を移して、微かに苦笑いを浮かべ、溜め息に近い吐息をゆっくりと吐き出す。


自らの分からない場所で皆が納得するのが、悔しいかの様に。


苛立ちと悔しさが入り交じった打ち明け場所のない感情を、晃は胸の内にしまい込んだ。
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