-Lost Japan-失われし愛国
「これは…?」


「通行証みたいね。その子が持ってたのよ。」


Alyssa=Chain


横書きに綺麗に書かれた名前に蓮哉は表情を歪める。


何故だろう?


確かに名前は少女のモノで、顔写真とも一致するにも関わらず、記憶の隙間から滲み出る欠落した記憶が、ソレを強く拒絶するのだ。
何故そう思うのか、その理由すら自分にも分からないのが不気味に感じてしまう。


この欠落した記憶の中にアリッサとの間に何かがあるんだ。
なら、アリッサが目を覚ました時、何て話し掛ければ良いんだろうか。


「一人で何考え込んでるの?何か疎外感を感じちゃうわ。」


「いや、何て報告しようかな…と。」


「確かに…敵の捕虜ではないしねぇ。」


咄嗟に思い付いた誤魔化しも、いずれにせよ悩む事柄の一つであり、遥香は顎に手を当てて考え始めた。
しかし、事態は簡単に解決出来る様な内容でもなく、遥香の表情は歪み始める。


「敵である政府の人間を本拠地に入れた訳だし、適当な理由じゃ済まされないわよ?下手すれば追放や処罰って可能性もあるんだから。」


「それは覚悟して来ましたから。命を奪われても構いません。」


──…此所は…?


(此所は何処…?私は…。)


身に覚えのない痛み…。


いや、それだけじゃない。


私は…誰?
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