-Lost Japan-失われし愛国
「ぐ…うっ!」


次の瞬間だった。


倉橋の右肩を一筋の線が貫通したかの様に見えれば、肩から赤黒く血が服に染み込み、溢れ出していく。
後ろの壁には銃弾が一発壁にめり込み、火薬の匂いが場を包んだ。


「テメ…ェ!やっぱり、…!うわああぁ…──っ!」


傷口を止血する為に近くにあった布切れで傷口から上を縛ろうとしていた蓮哉の耳元で、倉橋が瞳を見開いて恐怖に身を蝕まれたかの様に絶叫する。
蓮哉はその声に素早くアリッサに視線を向けた。


「…な…っ!?」


「……っ!は、は…あっ!」


視界の先のアリッサは先程までの不安気な様子はなく、逆に人の心すら失っている様な冷たい瞳で銃口を倉橋に向けていた。
しかし、蓮哉の顔を見ると我に返ったのか拳銃を投げ捨てて、床にしゃがみ込めば無意識に行なった自身の行為に恐怖を覚え、アリッサは頭を抱えた。


「蓮!さっきの銃声はなん…だ!?」


銃声が聞こえたのか急ぎ走って来た晃の表情は愕然へと変わった。
< 42 / 90 >

この作品をシェア

pagetop