-Lost Japan-失われし愛国
男性の名前は霧島殺巳(きりしま・さつみ)と言われており、謎の多いレジスタンスの狙撃手(スナイパー)で、年齢は誰も知らないが外見は三十代の後半に見え、人前に現れる時には黒いスーツの上に黒いコート、黒い手袋と深く被れば鼻辺りまで隠せる黒い帽子を着用し、漆黒に身を纏っている様な感じだった。
過去に暗殺を仕事としていた経験があるらしく、常に長距離狙撃用のライフル銃を持ち、霧島に捉えられた標的(ターゲット)は逃げられないと言われ、「蛇の瞳」という通り名も有名になっており、正式な司令官の高嶺からの信頼は厚く、何かしらの絆を感じられる関係だが真相は誰も知らない。


「…蓮君、それは出来ないわ。罪は受けるべき者は罪を背負う者だから、代わりに貴方が受ければ地下世界は法さえ失ってしまうわ。」


静流の言葉は正しい事だ。
罪人への裁きを誰かが代わりに受けるのは全く意味がなく、法は結局強い者が弱い者を潰す事に荷担する事になってしまう。


「…ならさ、俺と蓮哉のチームに入れて、兵として使ってみたらどうだ?」


「…晃君、貴方何を言ってるか分かってるのかしら?」


「へぇー…中々面白い案ねぇ。確かに罪人を戦場の前線に立たせるのは牢獄の中よりは、償いにもなるしね。」


「…決めるのは司令官だが、その案に異議はない…。あの少女は人を"殺れる"目をしてる。」


「…霧島さん、それはどういう意味かしら?」


「…言葉のままだ。」


霧島の言葉の意味を蓮哉は理解出来ていた。
アリッサの先程の瞳は殺める事に何の感情も抱かない殺人者の目だった。
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