-Lost Japan-失われし愛国
「はー…、暇ねぇ。早く愛しのイギリスに戻りたいわ。」

「はは、愛しのか。向こうの奴等にとっては大魔王に見えてるんじゃねえか?」


「意地悪ねぇーSったら。私の愛にみーんな死ぬ程喜んでるわよ。」


「本当に"死んでる"…しな?」

「これ、もう少し幹部としての風格を持たぬか。ただでさえ、今中国で何か起きようとしとるのに。」


各制圧担当国に帰国する為の飛行機を待ちながら会話を交わすFとSの間に入ったのは、車椅子に腰掛けたドイツを担当国としているBだった。
Bは政府の中でも古参で、今は年齢が七十を越えてる為か車椅子での行動を余儀なくされているが、旧日本政府から日本を支えていた柱の一つ的な存在だ。


「ん?別に風格なんていらねえよ。俺は"自分の国"を制圧する絶対的な権力と金さえありゃ良いのさ。」


「ふふ…、素敵な御話しだけれど私もパース。私は私のやり方があるのよ。」


「…、日本政府も終わりじゃな…。この国の為と思って儂は今まで政治家として働いて来たが、今の日本は間違っとる。やはり、戦争など…過ちを犯してはならな…──!」

Bの声を遮ったのは突如鳴り響いた銃声の音。
その音に驚いた訳ではない。Bの背中に開いた風穴は胸部に貫通し、FとSの間を通り過ぎ一発の弾丸は壁に埋め込まれた。
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