-Lost Japan-失われし愛国
「ふん、若造が俺に指図とは生意気な奴め。」


内装だけで何億するだろうか見入ってしまう豪華な食堂。

長いテーブルに並べられた豪勢な料理をマナー等を気にせず、右手に掴んだ北京ダックに勢い良く噛み付きながらWは不機嫌さを滲ませた声で呟いた。
日本政府に巨額の援助を贈り、その代わりに貰った地位に一時は満足感を感じていたが欲深い人間の欲に底はないのか、自らが誰かの下に居る状況に不安を感じていた。


「シ、失礼します。」


「ん…、もうそんな時間か。」

食堂の扉が開かれ、部下に連れられて食堂に足を踏み入れたのは食堂の華やかさに見合わないボロボロになった雑巾の様な服を纏った男性。
手には年貢として徴収している作物を持ち、怯えた様子で作物をテーブルにゆっくりと音を立てずに置く。


「こ、今月の徴収分です。御納め下さい。」


「…貴様。この俺様の器はどれ位だと思う?」


「え?その…W様は、中国全土を支配する方で偉大なる人物で…ぐ…ぶっ!」


Wの質問に対して答えを述べていた男性の顔面に皿がぶつかり、痛みに両手で顔を覆い声にならない叫びを上げた。投げた本人であるWは怒りに満ちた表情で鼻息荒く椅子から立ち上がれば、男性に歩み寄る。


「お前、今なんつったよ?」


「う…うく…っ。」


「何で皿をぶつけられたか分かってるのか?」


「ず…ずみませんでしだ。」


「謝るなって、俺が悪いんだしなぁ?で、思い出したか?」


「…偉大な…方。日本…っ…政府の柱…、中国の偉大な支配者…ざま…うあ"ぁぁ──!」
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