-Lost Japan-失われし愛国
「父親の背中…か。」


「ウェンには失礼だけれど、作戦を聞いた段階ではまだフォンさんには程遠い計略よ。あの人の作戦は抜け目がなかったわ。ただ一つ…、人を信頼し過ぎる点を除けばね。」


ウェンの追う大きな影の正体を聞き、作戦を練る時に普段では有り得ない様な難しい表情をする意味が分かったからかヨウレイはベットに寝転びながら言葉を呟いた。
メイフェイの表情は失った幸せを思い起こしたのか、微かな笑みに哀しみが籠り、脳裏に自分を迎え入れてくれた時の優しい笑みが蘇って来る。


「過去に戻れたのなら、私は今もまだ幸せに浸れていたかも知れない。良い夢は直ぐに覚めてしまうなんて、狡いわ。」


「…ああ。本当に良い夢は直ぐに覚めてしまう。悪夢は中々覚めちゃくれない。今みたいに…な。」


もう人口の何割が死んでしまったか分からない。
飢えに産まれた赤子も耐え切れずに死んでしまい、新しい生のない国はいずれは滅んでしまう末路なのだ。
これが夢なら、目が覚めたら皆、元通りなのだろうかとヨウレイは自身に問い掛けた。
< 59 / 90 >

この作品をシェア

pagetop