-Lost Japan-失われし愛国

一節─若き参謀─

「…、嫌な思い出だな。」


眩く視界を奪う偽りの太陽の光を片手で遮り、八神蓮哉(やがみ・れんや)は思い返した思い出に溜め息を一つ吐き出した。
三年間で日本は見違える程に変わった。
官邸は間も無く取り壊され、代わりに塔の様に高い建物が建てられ、そこを総司令部に各国に拠点を置き、世界を管理・占拠していた。


「此所に居たのかよ蓮。呼び出しだ。女王様が御立腹だぜ?」


「晃…、もうそんな時間か。」

空を見上げて、一人過去の出来事を振り返る蓮哉に、栗色の髪を弄りながら鷹凪晃(たかなぎ・あきら)は歩み寄り口元に弧を描く。
晃は憲法発令前にいた高校の親友で、蓮哉と同じく政府に従う事から背き、この地下に行く事を選び、レジスタンスの一員として活動していた。取り敢えず、急がねばならない状況と感じたのか、二人はレジスタンスの本部に向かい走り出した。


──「我々が全員集まるのは…、久方振りですかね。」


シャンデリアの光が室内を明るく照らし、大きなテーブルを囲む様に座る面々は、ワインを口にしながらパソコン越しの会議ではなく、久々の全員招集に言葉を交わしていた。


「私達を呼び出すなんて、何かあるのかしら?ふふ…、また国の一つでも滅ぼしたのかしら。」


「はは、F、それは冗談にもならない答えじゃないか。日本本部はKの担当だ。そんな事は安易にしないさ。」


幹部らしき人間達が会話を交わしていると、会議室の扉が開き一人の少年が、平然とその温和ながら危険な空間にと足を踏み入れた。


「…皆さん。お呼び立てしてすみません…。今日は皆さんに報告があり、呼び出させて頂きました。」


少年の姿は高校生程で、まだ若気の残る容貌とは裏腹に瞳からは、何も感じ取れない程の冷たい感情を漂わせていた。
集まった面々も、言葉なくとも風格に何かを悟ったのか問い掛けはせずに、言葉に耳を傾けた。


「報告は二つあります。一つ目は、私の事です。…今、指揮を取れないKに代わり代理を承り、指揮を取らせて頂きます。Rと呼んで下さい…。」
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