-Lost Japan-失われし愛国
──…夕暮れが町並みを染めていき、景色だけならば昔と変わらずに綺麗なまま。
でも、耳には鉱物の加工をしているのだろう金属同士がぶつかり合う音や現場監督をしているＷの部下の怒鳴り声が響き渡る。
脳裏にはシンメイの言葉が何度も何度も繰り返し再生されていく。


財布から取り出された一枚の紙幣を見つめて、メイフェイは監視員などに気付かれない様に建物の陰で蹲った。
酒と薬に蝕まれた父親に父親の暴力から自身のみを守り、私を身代わりにしていた自愛ばかりの母。


その不幸を全て貧しさのせいにして耐え続けていた時、私を救ってくれたのはウェンの家族だった。
でも、一人の子供を引き取るだけで学費から何まで払わなくてはいけない。


だから…、私はバイトと嘘をついて水商売に手を付けた。今まで母親がバイトをして稼いでいた頃の給料など比較する事も出来ない程の金を、金持ちに自身を売り込んで手に入れた。


初めては好きな人と。


そんな理想を描いていては稼げはしない。


経験者と強がり、相手に笑みを浮かべた自身にどれ程後悔しただろうか。
遠慮なく己の欲望をぶつける相手に消えない痛みに唇を噛み締めて耐えた夜は、私の堕落した生活の始まりだった。
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表紙・目次

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