-Lost Japan-失われし愛国
見つめた紙幣は綺麗な筈なのに禍々しい欲望に汚れて見え、次第にそこに雫が数粒落ち始める。


空から細かく降り始めた雨に紙幣が濡れたのだろう。
夕陽で橙色に染まる腕に落ちた水滴にメイフェイは言い訳を頭の中で紡いだ。


頬に伝う温い雫を拭いながら。


家族と訣別した時から感じる事のなかった目頭の熱さにメイフェイは両手で顔を覆った。


──…金に埋もれた人間は堕落して行くのかも知れないな。


「こんな紙切れ…っ!」


シンメイの父親に向けた言葉が自分にも突き刺さる様で、楽になりたいという気持ちからかメイフェイは紙幣を破ろうと指先に力を込める。
しかし次の瞬間、後方から伸びて来た手がメイフェイの身体を包み込み、強く後方の人物に抱き寄せられた。


「!…だ、誰…?」


「さあ、誰だろうな。」


「…!」


後ろの人物の正体を問うメイフェイに返って来た返事は優しく昔から聞き親しんでいた声で、抵抗していた手足は正体が分かるとピタリと止み、メイフェイは口を閉じて顔を見られない様に顔を俯かせた。


「顔…、見ないでね。凄い事になってるから。」


「ごめんな、メイフェイ。」


「何を…、謝ってるのよ。」


耳元に囁かれた静かで哀しみを含んだ言葉に、メイフェイはウェンの言葉の真意を問い掛ける。
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