-Lost Japan-失われし愛国
「…分からねえ。でも、何でだろうな?」


「意味が分からないわよ…馬鹿。」


後ろから強く抱き締める感触。
ウェンの言葉の意味なんて理解は出来なかったけれど、自身を包み込み守ってくれる様な二つの腕は心を熱く焦がし、メイフェイの亀裂の入った心を癒してくれている。
時計を止める事が出来るならば、ずっとこのまま時を止めて温かな感覚に浸っていたいとメイフェイは心の中で願っていた。


「大丈夫か?…メイフェイ。」


「え、ええ。大丈夫よ…大丈夫。」


後ろから呟く様に紡がれた言葉に、メイフェイは頬を微かに紅潮させて振り向く事をせずに小さく頷く。
これが今まで求め続けていた幸せなのだろうと、金を幾ら稼いでも得る事のなかった気持ちは直ぐ近くにあった事を改めて教えられた気がした。
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