-Lost Japan-失われし愛国
「今でも後悔してる。ずっと…、何で気付いてやれなかったのか…ってさ。だから俺は軍人になって、収入が高くなる様に偉くなって、金持ちになるって決めたんだ。そして、お前の一生分の指名を買い占めるんだ。な?名案だろ。」


「馬鹿…、本当に馬鹿なんだから…っ。」


無理矢理に押し込んでいた涙が、ブレーキが壊れた様に止めどなく溢れ出して来る。
感情に我を忘れて向き直った視線の先で、ウェンが頬に涙を伝わせながら笑みを向けてくれた。
ウェンの笑みは、強がり隔てていた心の壁をあっという間に壊し、メイフェイはウェンの胸板に額を押し当てて抱き締め返した。


「馬鹿だろうな…。利口者なだけなら、どうしたら自分の労働が減るを考えるさ。でも、馬鹿を支えてくれるだろ?」


「ふふ…、しょうがないわね。ウェンみたいな大馬鹿さんは、私位しか支えられる人いないわよ。」


まだ素直になれない部分は残っているが、やっと言えた気がする。


ずっと側に居たい。


この言葉を遠回しに言うだけで、今までどれだけ擦れ違い強がっていたのだろうか。
漸く抱き締める事の出来た瞬間、二人の耳には徐々に酷くなる雨音すら幸福を祝う拍手に聞こえていた。
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