-Lost Japan-失われし愛国
「やっと帰って来たか。二人して随分雨の中に居たんだな。」


「ウェーン。水も滴る良い男じゃねえかい。」


地下室に戻った二人を待っていたヨウレイとシンメイは、軽く茶化しを入れながらも二人の姿に笑みを浮かべた。
まるで二人がどうしていたのか分かっているかの様なヨウレイ達に、メイフェイは長い髪をタオルで拭きながら顔を紅潮させて軽く背ける。


「あ、雨宿りする場所がなかったのよ。別に何でもないわ。」
「冷やかすなよ。悪いが作戦の通達は明日行なう。こんなずぶ濡れになって風邪引いたら、日本の旗を倒す前に自分が倒れそうだからな。」


「了解だ。それに今なら監視員も少ないから、楽に戻れそうだしな。」


「ま、仕方ない事だな。じゃー、メイフェイちゃん帰ろう…いてててっ!」


「良いから、俺らは先に行くんだよ。ったく空気位読めよ。」


ウェンの言葉を了解の意を込めてヨウレイは頷き、メイフェイを誘おうと声を掛けるシンメイの腕を引っ張りながら、部屋の外へと出て行った。

「ま、全く。無駄な気を利かせやがって。な?メイフェ…。」


ヨウレイの行動に微かに頬を紅潮させ、照れが先行して思ってもいない事をぼやきながら振り返るウェンの服の端を、メイフェイは小さく摘み俯いていた。
その行動が、何を指す事か位はウェンにも理解は出来ただろう。
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