-Lost Japan-失われし愛国
「メイフェイ…?」


「意地張り続けるの疲れちゃった…。今なら素直にウェンを求められるの。今逃したら…私…私、もうチャンスがない気がして…。」


その言葉だけで十分だろう。
ウェンの心は瞬く間にメイフェイに魅せられていた。


いや、魅せられていたのは、ずっと昔…小さなあの時から、魅せられていたのだろう。
ただ、その感情に素直になれなかっただけで、ずっと昔から…。


「…俺はお前の事を愛してる。メイフェイの全ては、俺のモノだ。誰にも渡しはしない。」


「…っ…。私も、私も愛してるわ。だから、貴方の全ても全て私だけのよ?…ふふ、私達…何年かかったのかしらね。この言葉を交わすのに。」


メイフェイの頬が淡く赤みを帯びていき、照れと笑みがゆっくりと混ざり合い、幼い頃に見たメイフェイの照れた笑みがウェンの脳裏に思い出されていく。
このずっと伝えられずに胸の奥底に沈められた想いを、今ならば正直に交わし合えるだろう。


「メイフェイ…。」


「待って。…明かり…、少しだけ消して?」


──…交わした唇は今までの想いが籠り、抱き締めた身体は、まるで互いをずっと求めていたかの様に強く抱き締めあった。
部屋を照らしていた三つのランプの内、二つを消して、暗い室内を一つのランプの明かりが仄かに二人を包み込んだ。


今まで分かっていたつもりで、分かっていなかった。


愛を確かめ合う行為は、お金を稼ぐ為にあるものじゃない。
メイフェイは初めて愛の形を知った少女の様に、ウェンの胸の中で夜を過ごした。
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