-Lost Japan-失われし愛国
──…此所で覚めて欲しい。


しかし、意識は現実に向かわずに、夢は家族を見れた嬉しさから、悲劇の悪夢の場面へとまるで早送りする様に、目まぐるしく景色は変わっていく。


「…反乱?」


「ああ、これは内密に頼むぞ?いつまでも此所に独裁者の真似事をしている、日本の奴等を野放しにはしておけない。」


「で、でも…ただでさえ、中国の軍部指揮官の立場で追われている身なのに、そんな事をすれば…。」


「追われているからこそ…、さ。見付かった公開処刑になる位なら、自分の策に賭けてみたいんだ。」


悪夢の始まりの1ページ目だ。


この頃の俺は、既に軍部に入れる位の力は付いていた。
遠目から見る愚かな自分の姿は、父の力になりたいと願い出ていた。


「親父、俺も…、俺も戦う!もう一人の兵として戦えるから…っ!」


「駄目だ…。お前は母さんとスンレン、メイフェイを守ってくれ。これは、大事な任務だ…頼むぞ?ウェン。」


「………。」


もし…、


この時、諦めずに共に戦いたいと願い続けていたなら。


もし…、


親父の背後で見開いている、裏切りの瞳を見抜く事が出来ていたなら。


親父を…、


母さんを…、


妹を…、


助ける事が出来たのかも知れない。
< 72 / 90 >

この作品をシェア

pagetop