-Lost Japan-失われし愛国
「久し振り。中々会いに来れなくて、すまないな。」


「ふざけないで…!…な、何しに来たの?貴方が母や父に祈って許しを乞おうとも、私が貴方を許さないわ…!」


「祈って罪は消えやしないし、許しは乞わない。俺は罪から逃げないからな…。」


明らかに向けられる強い敵意を、ヨウレイは目を逸す事をせず、直に受け止めて見つめ返した。


第五次世界大戦と呼ばれる戦争。
日本が攻め込んで来る前に、世界各国で勃発した戦争で、ヨウレイはスーミンの両親を"殺し"自分だけ生き延びていた。
それまで二人は、仲良い幼馴染みであり、互いが互いの良き理解者だった。


「もう最後の訪問だと思うから、安心しろよ。さて…─。」


「最後…?最後って何なのよ?」


「ん?別に良いじゃねえか。ツェンさん、今日は水を多めに持って来たよ。」


最後。さり気ない言葉に潜まされた一つの単語は、スーミンの心を強く揺さぶり、動揺の中で聞き返した言葉を、ヨウレイは答えずに新しく作った話題で押し潰した。



──…いつもそうだ。大事な事を虚ろにしたまま、保留にする。あの時も…。
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