-Lost Japan-失われし愛国
「あ、有難うねぇ…。良いのかい?ヨウレイも、お腹空くだろう?」


「いーや、都会に居ると食べ物に困らないからさ。でも…、もう少ししたら、こんな生活が終わるから…、絶対に。」


背負って来た大きく膨らんだバックを開き、中に入った食料や水を見せながら、自分の中で表せる限り笑みを浮かべ、安心させ様とヨウレイは語り掛けた。


「そう…かい?有難う…、本当に有難うねぇ…。」


「…ヨウレイ、まさか…。」


「……、じゃあ、俺は行くんで。」


スーミンの言葉は、全て沈黙に握り潰されていく。
まるで、真実を隠す様な不自然過ぎる沈黙に、スーミンは自身の考えが正しい事を恨んだ。
扉のノブを握り締め、開いた時に見えた横顔。
その唇が紡いだ声無き「さよなら」が、スーミンの身体を無意識に動かした。


「ま、待って…。」


「…どうした?」


「久々なんだから、ゆっくりしていきなさいよ。」


「俺に気を遣わなくて良いさ。別に見返りが欲しくて来た訳じゃ…──。」


「良いから、ゆっくりしていきなさいって!」


ヨウレイの腕を無理矢理に掴んだ腕は、怒りではなく焦りに震えていた。
この震えた腕をヨウレイは、振り切る事が出来なかった。
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