-Lost Japan-失われし愛国
「ふむ、君の部下だ。好きにするが良い。そろそろ聞かせて貰えるかね?もう一つの話を。」


「ええ。簡単に言えば各国の反日本の旗を掲げた民が集まって来ています。それは御存じですか?」


Dは自身の部下の事さえ他人事の様に話す態度に苛立ちを覚え、死神のカードをRの手から取り上げては、手の平に死神のカードを収めて握り潰しながら、首を傾げる。
Rの表情は目の前の行動に関心すら示さずに、もう一つの話を問われ、持って来た鞄の中から政府最高機密という判の押された一枚の書類を取り出し、皆に見える様に差し出した。

「当たり前さ。各国のレジスタンスを鎮めるのが、俺ら責任者の仕事でもあるからよ。」


「そうでしたね。まあ、問題はある国が対政府兵器を造っているという話なんですが。」


書類には各国のレジスタンスが軍費を寄せ集めて、一つの兵器を開発している事について書かれており、その内容に一同の表情に微かだが亀裂が入る。
日本は今世界を支配する国家となってはいるが、世界を敵に回していると言っても過言ではなく、やはり世界からの報復を警戒するのは当然の事だった。


「重大な事に間違いはなさそうだな。しかし、情報が少ないのではないか?この広い世界の中から探せと言うのかね。」


「ふふ、大き過ぎるのも困りモノね。でも、その口振りなら、何かまだあるんでしょ?R君。」


苦虫を潰した様な表情で首を傾げるDの横で、大きく胸元の開いたスーツを身に纏うFは、紅く彩られた唇で弧を描き妖艶な笑みを浮かべながらRに視線を向けた。


「ええ。その設計図は私の向かわせた部下が内密に輸送していた所を奪取したのですが、残念ながら先程の部下が、その部下なんです。」


「ははっ、本当面白いな。ソレは何も出来ないって事じゃないのか?」


Rの言葉にSは吹き出した様に笑い声を上げて、自分の考えと全く違う行動を取るRに懐から煙草を一本取り出し口元に咥える。
その表情は楽しさを滲ませ、次の解答を楽しみにしながら煙草の先端に火を付け、白煙を吐き出した。


「そうなりますね。確かに今は打つ手はありませんよ。」
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