-Lost Japan-失われし愛国
布団の横に腰を下ろしたヨウレイの瞳を、ツェンは静かに見据えて乾いた唇をゆっくりと開く。


「ヨウレイ、有難うねぇ…。スーミンを想ってくれて。」


「え?別に俺は何と言うか…、こうなってしまった原因は俺のせいですから。」


「だからこそ…だよ。何を抱え込んでおるかは、私には分からん。しかし、その抱え込んでいる事がスーミンを救ってくれている事は分かる。」


不意に核心を突かれ、ヨウレイは焦りを隠す事が出来ずにズボンの生地を強く握り締め、額に嫌な汗が滲んだ。
その雫は額を滑り落ちて、頬に伝う。
強く駆り立てる不安と共に何故だか逆に、他の人間が自身の抱えていた苦しみを知ってくれている事に、安堵感も感じていた。


「…この事は、スーミンには?」


「推測で語る程、私は愚かではないよ。」


「ツェンさん。これから話す事は、俺がこの家を去ってからスーミンに教えてやって下さい。」


「去ってからで、良いのかい?」


「はい…。」


──…これで良いんだ。



──…これで…。
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