-Lost Japan-失われし愛国
朽ちた屋敷の中で、既に何十分という刻が過ぎただろうか。


二人の間に沈黙が流れて行く。


「……、もう、分かっ──」


「黙れ…!」


「親父!」


「黙れと言…っ!」


興奮し充血した眼を見開き、怒鳴りつける父の頬をシンメイは強く握り締めた拳で、勢い良く頬を殴り、地面にと倒した。


「黙るのはそっちだろう!」


「…っ…ふふ…人を簡単に傷付ける。…流石は親子、だな。」


地面に倒れた父の表情は、痛みとは別に笑みを滲ませ、シンメイを睨み付けた。
老いて尚、昔植え付けられた父への恐怖は心の何処かにあったのだろう。
父と視線合わせる事が出来なかった。


「どういう意味だ…?」


「お前を産んだ…あの屑に似ている。私から金を奪って逃げ、私を傷付けた女にな…!」


「…ふざけるな…!…お前の…お前の様な男を…母さんはあれ程信じていた!そんな母さんを…屑…だと!?」


「ふ…ふふ…、ふはは…!笑わせてくれるじゃないか。…この餓鬼ッ!」


怒りに前が見えていなかったのだろうか。
勢い良く殴りかかって来た父をシンメイは避け切れず、床に倒れ込み、馬乗りの状態で顔を数回殴られた。
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