最愛。
「っあ、ねぇ志織。

トイレ行かない?」

志織を誘い、向かっている途中。

あと十数mのところで、

ゴツンッ

痛々しい音と共に、あたしの頭は固い何かに当たる。

正面でぶつかったから、恐る恐る顔を上げると、男の人だった。

「あっ、ごめん。

ちっこくて見えなかった。」

そう言い残して、あたしの目の前からいなくなった。

棒読みで言ったこの人。



……心の声を、少し。

"はい、こいつ謝る気ねぇし、悪いと思ってねぇな。"

……心の声終了。失礼しました。



すごく固かったあれはたぶん、胸板だったのだと思う。

きっと、鍛えられてできたものだとあたしは思った。

「ふ、ふ、づき。」

ちょんちょん。とあたしの肩をつついてくる。

「今のぶつかった人。

あの人が━━━…」

続きをなかなか言わない志織。

さっきまでとは何か違うくて、顔が少し赤い。

「っえ、何?

志織の好きな人か何か?」

「そんなわけあるかっ!!

あの人がこそが、この学校で一番イケメンと言っていいほどかっこいい、あのNo. 1なんだからっ!!」
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