華の涙
「月を眺めていんした…」
微笑を浮かべる私を見て
定吉様は不機嫌そうに眉を寄せる。
「寒いってのに…そんな薄着で…それに、お前な」
きた…説教の時間。
「もっとお前は自分の体を労わるべきだ」
「…そうかい?」
「高尾花魁の次はどう考えてもお前なんだ。今日だって客は既に4人。近頃、よく競っているしお前にはその顔と…」
「はっ…あの“天性の美貌を持つ女”ってやつかい?」
定吉様の声をさえぎって
呆れた笑いを零す。
そう…私は、
皆から“天性の美貌を持つ女”とされ
将来を期待されていた。
………ムカつく話さ。
昔から、私は人ではなく
単なる道具として扱われているのだから。