華の涙
聞き慣れて呆れてばかりの言葉だったはずなのに
今日はなんだかだめだ。
言うだけ言い、
定吉様に背を向けて走り出す。
「紫乃…っ!」
定吉様が何か声をかけてきていたが、
涙を拭うのに精一杯で無視を貫く。
2階の誰もいない部屋で
その夜は泣いた。
朝霧花魁…
あんたの言葉の意味、理解したよ…
ふっ…と冷めた笑みを浮かべ、
吉原の街並みを見下ろした。
「……わっちはこの吉原の頂点に立つ」
……次の日から
いつも以上に客を取った。
何故だかわからないけど
男が喜ぶ事、欲情する仕草が
手に取るように分かった。
朝霧花魁の言っていた、
私の武器を最大限に活かす法を
私は初めから知っていたんだ