華の涙





彼女の名は紫乃(シノ)



貧しい農家に生まれ、

九つの時に吉原へ親に売られたのだ。




紫乃には、

なにもせずとも男から指名が入る。




当然、紫乃の美貌は周りの女よりも

随分勝れていたから。



美しく床での芝居も上手い紫乃には、

この店の亭主も女将も

大そう彼女を気に入っていた。





「紫乃。お呼びだよ」

「…………。」





女将の声を聞いて、

男の待つ部屋へと通される。




部屋へ入ると紫乃は

先程までの仏頂面を笑みに変え、

丁寧に男へ酒の釈をする。





そして…酒を飲んでいた男は

段々と紫乃に触れだす。





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