華の涙






驚きを隠して、男の隣へと座る




「紫乃と申すのか…」

「…あい」




コポポ…と酒を注ぎながら

優しい口調で答える




「ぬし様は…何と申されるのでありんすか?」

「ああ、申すのが遅れたな…私は上杉一之助と申す」

「一之助様…でありんすか」





整った顔に爽やかな笑顔、

優しい声…





「……その簪…綺麗だな」

「ふふ」





一之助様は私に触れない。

触れたとしても、指一本を一瞬……




初々しさが可愛らしくて


遊女である私にも

丁寧に接する優しさを見て




なんだか惹かれた。








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