華の涙




籠から出て自分の部屋に戻ろうという時…





「紫乃、茂孝様がいらしたよ」





女将が私を呼んで

くるりとうしろを振り向く




「…嫌でありんす」

「紫乃!!」




女将さんの張り上げた声と共に

亭主が私の方へと近づいてきた




「…紫乃。花魁でもねぇお前が、客を選ぶのか?」





また………。



高尾花魁共も亭主も

皆同じ事を言ってくる




思い出す事実。



亭主や女将は私を

ただの金儲けの道具として扱い、

男達は性欲処理の道具として扱う。




一之助様以外は

人間として扱ってくれない事







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