華の涙







行水で仕事ができない日、

ボーっと庭から見える夜空を見ていると

定吉様が話しかけてきた。




「夕菊…お前、身請けされたんだってな」




優しく話しかけてくる定吉様に

私も同じように返事をする





「あい…夢のようでありんす」





そう言って、欠けた月を眺める


…今夜は三日月





「…お前は、いつも空を見ているな」

「わっちは、空が好きでありんす…日が暮れれば月夜、日が昇れば朝日………」




淡々と語る私の隣に

定吉様が座って話を聞く






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