華の涙






「でも…一番は春の空が好きでありんす」

「春…か?」




春の空…

幼き記憶に残る綺麗な空




「桜が舞い、青が広がる空に暖かな日の日差し…」





私は親に売られた




…だけど、私の外で見た桜は

どんな着物や宝石よりも綺麗だった




そして…


そんな美しい桜は

この吉原には無い





「わっちは…また、あの桜を見る事ができるのでありんす。…それも、愛しい人の傍で」





それは涙が出るほど嬉しい事…


私は、恵まれていた







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