華の涙
大きな大きな空。
憧れていた、外の世界。
「わっちは…もう籠の中の鳥ではありんせん…っ」
そう言って泣く私の頭を
優しく撫でる一之助様
「ああ…夕菊……」
「一之助様、わっちの…私の、本当の名で呼んで下さいませ」
そう言うと
にこりと微笑む一之助様が目に映り
私は廓言葉をやめ、
本心から笑ってみせた。
「私の名は…春です」
「春……。そうか、春」
嬉しそうに、なんだか楽しそうに
そう言う一之助様を見て
私もふふ…と笑みが浮かぶ。