華の涙






……店の前に並んで

朝霧花魁の見送りを皆で行う。




綺麗にめかしつけられた姿は

やはり、綺麗で………




立ち去る前、

朝霧花魁は私の顎に手を伸ばし

くいっと視線を合わせさせた。




間近でぶつかる視線……



朝霧花魁の、整った顔が

吐息のかかる距離にあった





「紫乃…お前の武器はその顔じゃ。使い方は、お前がよう分かっておるだろう?……頭も良くて昔から小生意気なお前は、花魁の素質が十分あるよ」





いつもの余裕な笑みを浮かべて

朝霧花魁は歩み始める。




そっ…と朝霧花魁に

触れられた顎と頬に手を添え

ゆっくり瞼を閉じる。




もしかして、

朝霧花魁は私に…………






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