MagicianS
マーレの家は「暗い森」の近くにあり、秋になると木の実が沢山落ちている。


マーレは2年前くらいからオンダと一緒に暮らしていた。


マーレは大きな蒼い瞳で、髪の色と同じ栗色のまつげで縁取られている。


性格も明るく優しいから友達が多かった。


オンダは髪は短めでメリーゼルには珍しい黒髪を持っていた。


更に瞳の色は綺麗なエメラルドグリーン。


性格は大人しく、それでも思いやりはとても強い。


しかし彼女は色々と目立った。


オンダの口は細い糸で結ばれていて、釘のようなもので打ち付けられていた。


小さい頃に色々あったらしいが、本人は全く覚えていない。


オンダはもちろん自分の口で話すことは出来ない。


しかし自分の考えた事を音にして話すことは出来る。


テレパシーとはまたちょっと別で直接脳内に送るのではなく、そのまま音にするのだ。



2人はとても仲が良かった。


「ただいまー」


マーレが家に帰るとオンダはお昼ご飯を作ってくれていた。


『おかえりー。もーちょいで出来るから待っててー』


「ありがと!楽しみー」


オンダは料理が得意で色々なものを作ってくれる。


『ほい、じゃあ食べましょ』


今日のメニューはミネストローネと手作りパンだ。


「いただきまーす」


早速スプーンで掬う。


どうしてこんなにオンダの料理は美味しいのだろう。


マーレはすぐに皿を空にしてしまった。


オンダは笑顔でずっとマーレの美味しそうに食べてる所を見ていた。


「お待たせ!」 



『そんな急がなくてもいいのに』


「急いでないわ、美味しいからつい食べちゃうの」


『そう言って貰えると嬉しいな』


「はい、じゃあいくよー」


オンダは自分で食べることが出来ない。


だからマーレが魔法に載せて送るのだ。


今感じた味覚、満腹感を。


《とどけ…あなたに、私の幸せ、世界中の…美しい贈り物、結晶となりて…》



《Feeling!》



マーレは自分の身体からすぅっと魔力が出ていくような感触を感じた。


オンダが胸に手を当てる。


『…ちょっと塩が多かったかしら』


「そんなことない、とっても美味しかった!」


『ありがと、マーレ』



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