MagicianS
「マーレ、あんたまだ魔力残ってる?ちょっと手伝って欲しいんだけど」


友人のリナに呼び出されていったのは「暗い森」の入口。


「どーしたの」


「見て、この子」


リナのスカートに隠れていたらしい、小さい子が顔を出した。


「リナ…いつの間に…」


「あたしの子じゃないわよ。残念だけど」


「え、てことは…」


「『はぐれ者』よ」


「こんな小さい子が?」


メリーゼルにはたまに『はぐれ者』が訪れる。


知りもしない「暗い森」に入り、迷ってメリーゼルに辿り着いてしまう突然の来訪者。


その場合はメリーゼルにくる前の記憶を消し、転送魔法で「暗い森」の出口(『はぐれ者』には入口)に連れて行く。


「こんな小さい子がひとりでくると思う?「暗い森」に」


「まだ見てないの?この子の記憶」


「だから魔力が足りなくてあんたを呼んだの」


「分かったわ」


マーレは小さい子のおでこに自分のおでこをくっつけた。


この子の記憶が流れてくる。


誰かに手をひかれている…


「暗い森」に入る…


どんどん奥に入ってく…


手をふりほどかれた…


そして…暗転した。


次には…リナの顔が移る。


「え?」


「どーだったの?」


マーレがおでこを離し、リナが心配そうに覗く。


「誰かと一緒にきたはずなのに、手をふりほどかれてた」


「それで?」


「リナの慌てた顔が移った」


「てことは…置いてかれた?」


「どこで見つけたの?」


「少し入ったところよ。10分歩いたかーとかそのくらい」


「うわー…どーする?」


マーレとリナが話してる間、小さい子はずっとリナのスカートを掴み、おろおろとしていた。


「記憶も曖昧だし…とりあえず私の家で預かるか」


「ごめんね、マーレ」


「大丈夫よ」


「悪いけど、頼んだ。あたしはいろんな人に相談してみるわ」


「うん。じゃあ君、行こうか」


マーレは小さい子に手を差し伸べた。


小さい子は恐る恐る手を取った。


「で、この子は男の子?女の子?」




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