帰宅部にお任せを

楓は隠れようともせず、堂々と扉を開け放った。

視界が広がる。


「……」

目にしたのは異様な光景だった。


颯の手には『生徒会室』と油性マジックで大きく書かれた金属バットが握られていた。

その先は膝立ちをしているユマさんに向いている。


…というより、向けられている。

颯ではなく、ユマさんによって。


我が身を傷つけてくれと言わんばかりの行動。

それに対し、それを制そうと身を引こうと後ろ側に体重をかけている颯。

両者ともバットを持つ手には血管が浮かび上がっていた。



「…あら、帰宅部の皆さん」

わたし達に気づいた彼女は顔だけをこちらに向ける。


「どうしたの、真希ちゃん。そんなに顔を強張らせちゃって」


これを目の前にして強張るなと言った方が無理だと思う。

少なからずとも彼女以外、皆動揺しているのではないか。
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