帰宅部にお任せを

「小さい頃から、何でも出来た。ひらがな、カタカナ、簡単な計算は皆より数倍早く憶えて使いこなしていた。体も利くし、頭も回る。やること為すこと全て完壁だった。自分はそういう人間なんだって思ってたわ。でもっ…!」

それから心底辛そうな表情を見せた。


「ある日ね、一番仲が良かった子に言われたの。『ユマちゃんって何でも出来て怖いね。化け物みたい』って…」

彼女の小さく笑う声は乾いている。


「自分とあなたは違うって軽蔑された。その子は幼いながらも何でも出来るわたしに嫉妬していたのかもね。でもその彼女の一言はわたしの心に深く突き刺さったの。深く―…」

彼女は胸を押さえる。

そして、苦しそうな表情。


「…勉強どころか学校もあまり行かなくなった。それでも成績は良すぎて、逆にそれが変な嫉妬を生むのだろうと無駄な足掻きはやめたわ」


「わたしは彼女の言葉が忘れられない。今でもたまに思う。皆、わたしが何でも出来て憎んでる。化け物の弱点を探ってやろうと、隙を狙って傷つけてやろうと考えて周りに集まってきてるのかもって…」


何を信じればいいかわからない。

まるで、疑心暗鬼の状態に陥っていた。


彼女は頭を押さえて座り込む。

そして叫んだ。


「もう傷つけられるのはいやあ!だから、自分で自分を傷つけて罪を償うのぉー!」
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