帰宅部にお任せを

「自分だけが、一番辛いなんて思ったら大間違いだ。皆、それぞれの苦しみを抱えて生きているってことを忘れるな」

颯の言う通り、皆全てが幸せな人間なんて存在しない。

"自分だけかわいそう"じゃない。


「それにな、お前自分傷つけて償いだとか言ってるけど、自分を傷つけたって何も変わりゃしねぇ。お前は試して何か変わったか?」

ユマさんは目を赤くして、涙を流しながらぶるぶると首を振る。


颯はその答えに満足してフッと笑う。

「だったら、傷つけんな。…前だけ向いてればいい」


ユマさんはその瞬間、立ち上がりそのまま颯の胸に飛び込んだ。

それを嫌がりもせずに受け止めた颯は、よしよしと彼女の頭を撫でた。



多分、彼女はもう自分を傷つけるようなことはしないと思う。


傷つけたって何も変わらない。

そう教えてくれた人がいるから。

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