帰宅部にお任せを
数日後、わたしはティーカップにいつもより気をかけて紅茶を注いでいた。
丁寧に注ぐ時は決まってお客さんが来る時だ。
そう、今日は先日わたしの所為でここに来ることになったお客さんがやってくる日。
熱々の紅茶を気品の漂うお盆にのせたわたしは、楓のいつもの言葉を待った。
楓を見つめていると彼はわたしの視線に気づき、こちらを向く。
「馬鹿が伝染りそうだから見ないで?」
…ムカツク!
飛びかかってやろうかと思ったけど、わたし両手は熱々の紅茶で塞がっている。
自分が馬鹿な目に遭うことが予想出来たので、ぐっとこらえた。
「それより、」
楓がクスっと笑みを零す。
「来るよ、"お客さん"……」
その一言で部屋の空気が一瞬にして変わった。
この変わりようはどんなに時が経っても慣れない、気持ちの悪いもの。
わたしは酸素を吸い込み、この気持ち悪さを晴らそうとした。