帰宅部にお任せを
楓は視線をお嬢様から外し、その隣に移した。
「…その隣の方は?」
彼が指差す先には、一人の女子が姿勢よく立っていた。
まるで、お嬢様の付き人のよう。
でも、この学校の制服を着ているところからは、断定できない。
お嬢様は首をゆっくり、付き人らしい生徒に向けて説明をした。
「この方は、わたしの下僕なの」
平然とした態度。
……下僕!?
わたしは目を丸くしながら、付き人らしき人に目を向けた。
「下僕って……」
目が合った彼女は浅く礼をする。
「はい。私は由美お嬢様の下僕、丸山(まるやま)と申します」
「ね、彼女も言っているでしょう」
お嬢様は満足げな表情をして、楓に向き直った。
「そんなことより、わたしの依頼を早く受けて頂戴」
そう言って、我儘お嬢様は懐から諭吉さんの描かれたお札を何枚か見せた。