帰宅部にお任せを

「遅刻とか、迷惑なんだけど」

その影は続けて黒い言葉を吐きだした。


「す、少しくらい遅刻したっていいじゃない、楓(かえで)」

これでも一生懸命走ってきたんだから。


「真希、落ち着けって」

隣で廉がなだめる。


「少しくらい、ねえ…」

楓は椅子から腰を上げる。

まるでボスが座る特等席のように一番大きくて、ふかふかで、真ん中に位置するそれを。


「な、何よその言い方!」

「いや、別に。そっちこそ、警戒心丸出しでリスみたい。キーキーうるさいし」

「…!どうせ、うるさいやつですよっ」


ああ、もうムカツク!

今日という今日こそ、出て行ってやる!


わたしは扉の方へ向かうために、踵を返す。


が、それを見事に阻止された。

楓によって。



「真希、席着くよ。…ほら、廉」

楓はわたしの首根っこ掴んだまま、そう言った。
< 7 / 121 >

この作品をシェア

pagetop