帰宅部にお任せを
「遅刻とか、迷惑なんだけど」
その影は続けて黒い言葉を吐きだした。
「す、少しくらい遅刻したっていいじゃない、楓(かえで)」
これでも一生懸命走ってきたんだから。
「真希、落ち着けって」
隣で廉がなだめる。
「少しくらい、ねえ…」
楓は椅子から腰を上げる。
まるでボスが座る特等席のように一番大きくて、ふかふかで、真ん中に位置するそれを。
「な、何よその言い方!」
「いや、別に。そっちこそ、警戒心丸出しでリスみたい。キーキーうるさいし」
「…!どうせ、うるさいやつですよっ」
ああ、もうムカツク!
今日という今日こそ、出て行ってやる!
わたしは扉の方へ向かうために、踵を返す。
が、それを見事に阻止された。
楓によって。
「真希、席着くよ。…ほら、廉」
楓はわたしの首根っこ掴んだまま、そう言った。